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誰がこの作品を ”ヌーベル・フィルム・ノワール”と呼んだのだろう。この作品は伝統的すぎるくらいに往年の暗黒映画に似ている。
それはしっとりと濡れた夜の街の点滅する信号機のショットから始まる。ランベールという中年男が夜勤するガソリンスタンドに、1人の青年がやってくる。ベンスサンというヤクの売人をしている青年だ。孤独な男同士に奇妙な友情が芽生えるが、ベンスサンがヤクの売人をしていることを知ったダンベールは烈火のごとく彼を叱咤した。そんなある日、パンク少女と束の間の逢引を楽しんだ ペンスサンは、麻薬絡みのいざこざ でランベールの目前で殺されてしまう。彼の死は寡黙な中年男の閉ざされた過去に火をつけた。パンク少女の助けを借り、ランベールの復讐が始まる。
この作品を見た時、なんてクライ作品なんだと開口一番怖気づ いてしまった。しかも中盤で青年が死んでしまい、あの中年男が主役なのかとほとんど悲鳴に近い落胆があった、それが中年男の復讐戦が始まる頃には、その秘められた情念の熱さに酔いしれ始め、ゆきずりのチョイ役だと思っていたパンク娘がどんどん魅力的に見えてくるという映画のマジックにはまってしまった 。
パンク娘が中年男に惚れるなんて尋常でない展開を、自然で当然な結果のように見せる演出手腕も大したものなら、人間として再び生き始めた中年男に課せられたモラルも1級のハードボイルドだ。売人たちを一人ずつ殺して帰ってくる中年男をいくらパンク娘がベッドに誘っても、人を殺した手では決して女を抱かないというストイックさはアッパレ。2人が結ばれるのは最後の男を殺さずに帰ってきた その時だけなのである。
ほとんど私怨と言っていい復讐劇を、男が男としての誇りを取り戻す”再生”の儀式に置き換えた映画的構造も、確としたモラルが存在しなければ空念仏に等しい 。そういった作り手たちの節度が、この映画を身震いするほどの傑作たらしめたのだ。登場人物4人とも噛むほどに味の出る魅力的な顔の持ちだ。モノトーンの映像で見たこともない パリを映し出したカメラ、 全てはロケーションと思い込ませた卓越した美術 、そしてベテラン 監督の格調ある演出。惚れ惚れとする作品である。
20頁の解説書付(特典のCahiers du Noir No 8)
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